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石川 法人; 福田 将眞; 中嶋 徹; 小河 浩晃; 藤村 由希; 田口 富嗣*
Materials, 17(3), p.547_1 - 547_21, 2024/02
被引用回数:0 パーセンタイル:0.04(Chemistry, Physical)340-MeV Auイオンビームを照射した天然ジルコニアにおいて形成されたイオントラックとナノヒロックを透過型電子顕微鏡で微細観察した。ナノヒロックの寸法が10nm程度であり、局所溶融した領域の寸法と同程度であることが分かった。したがって、一旦溶融した結果としてイオントラックとナノヒロックが形成されたことが分かる。次に、イオントラックを観察すると長方形の断面形状をしており、かつ結晶構造が大きく溶融前と変化していないことが分かった。したがって、他のセラミックスと異なり、ジルコニアにおいては、局所溶融後に、結晶構造を反映した異方的な再結晶化が起きていることが強く示唆される。一方で、イオントラックの中心部には、飛跡に沿った低密度のコア領域が形成されており、イオンビームが入射した表面への物質移動により物質欠損が形成されていることも判明した。物質欠損を伴う条件では再結晶化が不十分となり、飛跡のごく近くでは低密度コア領域が形成されていると説明できる。
株本 裕史; 松田 誠; 中村 暢彦; 石崎 暢洋; 沓掛 健一; 乙川 義憲; 遊津 拓洋; 松井 泰; 中川 創平; 阿部 信市
Proceedings of 19th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan (インターネット), p.1109 - 1113, 2023/01
原子力機構-東海タンデム加速器施設は最高運転電圧が約18MVの大型静電加速器で、重イオンビーム等を用いた核物理,核化学,原子物理,材料照射などの各分野で利用されている。本発表では、2021年度における加速器の運転・整備状況およびビーム利用開発等について報告する。当施設では近年、運転中の放電が頻発するため、加速電圧を約15MVと以前よりも低く抑えている。これは加速電圧に対する絶縁性能が必要な機器類(セラミック製加速管や発電機駆動用アクリルシャフト等)が経年劣化してきているためと思われる。2021年度には低エネルギー側加速管7本(3.5MV相当)とアクリルシャフト2本の交換作業を行い、絶縁性能の回復を図った。2020年度にも同様の交換作業を行っており、全体的に経年劣化が進んでいると思われることから、今後は抜本的な対策を検討する必要があると考えている。また、当施設では、現在の施設のアップグレードを行い、後継となる加速器を導入する計画の立案を行っている。超伝導加速器の技術を使用し、高エネルギー・高強度の重イオンビーム等を発生させるものであり、こちらの概要についても併せて報告する。
石川 法人; 藤村 由希; 近藤 啓悦; Szabo, G. L.*; Wilhelm, R. A.*; 小河 浩晃; 田口 富嗣*
Nanotechnology, 33(23), p.235303_1 - 235303_10, 2022/06
被引用回数:4 パーセンタイル:48.5(Nanoscience & Nanotechnology)高速重イオンを微小入射角で照射したNb添加SrTiOの表面ナノ構造を調べた成果についてまとめた。セラミックスに対して高速重イオンを微小入射角で照射すると、ヒロックチェーン(イオンの飛跡に沿って、複数個並んで形成されるナノヒロック)が表面付近に形成されることが知られている。我々は、ヒロックチェーンの形態・性状をAFM(原子間力顕微鏡)とSEM(走査型電子顕微鏡)を利用して、詳細に調べた。その際に、全く同じヒロックチェーンを、AFMとSEMのそれぞれで観察することに成功した。AFMの観察データは、先行研究の示す通りに、ヒロックチェーンが形成されていることを示している一方で、SEMの観察データは(同じヒロックチェーンを観察しているにもかかわらず)ヒロックチェーンをつなぐ黒い線状コントラストも現れることが判明した。これらの新しい損傷データをもとに、ヒロックチェーンの形成メカニズムについて推論した。さらにTEM(透過型電子顕微鏡)観察し、微小入射角で照射した際に形成される特殊なイオントラック損傷の形成プロセスを明らかにした。
石川 法人; 田口 富嗣*; 小河 浩晃
Quantum Beam Science (Internet), 4(4), p.43_1 - 43_14, 2020/12
LiNbO, ZrSiO, GdGaO, SrTiOについて、200MeV Auイオンを照射し、透過型電子顕微鏡で、照射損傷組織(イオントラックとヒロック)を詳細に観察した。その結果、LiNbO, ZrSiO, GdGaOは、イオントラックとヒロックともにアモルファス化していることが確認され、耐照射性の低い「アモルファス化可能材料」に分類されることが確認された。一方で、CaFなどのフッ化物は、耐照射性の高い「非アモルファス化可能材料」に分類されることが、我々の前回の研究で判明している。ところが、本研究で調べたSrTiOは、2つの分類の中間に当たることが判明した。耐照射性の観点から区別される2つの材料分類を分ける材料基準が何なのか従来から問題となっていたが、本研究により、イオン結合性の強さ、結晶対称性の高さが、その材料基準となることが示唆された。
喜多村 茜; 石川 法人; 近藤 啓悦; 山本 春也*; 八巻 徹也*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 460, p.175 - 179, 2019/12
被引用回数:3 パーセンタイル:32.64(Instruments & Instrumentation)高速重イオン(SHI)がセラミックスに真上から入射すると、SHI一つに対してヒロック(ナノメートルサイズの隆起物)が一つ表面に形成される。一方で近年、SHIがチタン酸ストロンチウム(SrTiO)や酸化チタン(TiO)の表面をかするように入射した場合、表面にはイオンの飛跡に沿って連続的に複数個のヒロックが形成されると報告された。これらは原子間力顕微鏡(AFM)を用いて観察されており、観察結果にはAFMのプローブ寸法由来の測定誤差を含んでいる。そこで本研究では、ヒロックのサイズより十分小さい分解能(1.5nm)を有し、非接触で観察可能な電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて連続ヒロックを観察する手法を検討した。本発表では成功した連続ヒロックのFE-SEM観察結果とともに、AFM観察との比較を通して連続ヒロックの形状を報告する。
金正 倫計; 神谷 潤一郎; 阿部 和彦*; 中村 止*
Proceedings of 10th International Particle Accelerator Conference (IPAC '19) (Internet), p.4161 - 4163, 2019/06
J-PARCの3GeVシンクロトロン(RCS)に使用されるアルミナセラミック真空チャンバーは、アルミナダクト,チタン(Ti)フランジ、およびTiスリーブで構成されている。アルミナダクトとTiスリーブをろう付けする前に、Tiスリーブを硝弗酸で処理した。この研究の目的は、チタン材料に対するこの処理の効果を明確にすることである。SEM観察により、硝弗酸処理後のチタン材の粗さが大きくなることが明らかとなった。また、チタン材表面の酸化皮膜の厚さは、処理前は12.7nm、処理後は6.0nmであった。これらの結果から、硝弗酸処理により、チタン表面の酸化膜が除去され、さらに表面粗さを大きくする効果があることが明らかとなった。さらに、アルミナセラミックと純チタンの間のろう付けには硝弗酸処理以外に、真空加熱炉の真空条件、及び昇温条件が重要であることが明らかとなった。この成果により、真空漏洩の低減、及び真空チャンバー製作時の歩留まりの大きな向上が見込まれ、加速器の安定運転に貢献するものである。
喜多村 茜; 石川 法人; 近藤 啓悦; 藤村 由希; 山本 春也*; 八巻 徹也*
Transactions of the Materials Research Society of Japan, 44(3), p.85 - 88, 2019/06
高速重イオンがセラミックスに真上から入射すると、イオン一つに対してヒロック(ナノメートルサイズの隆起物)が一つ表面に形成される。一方で近年、SHIがチタン酸ストロンチウム(SrTiO)や酸化チタン(TiO)の表面をかするように入射した場合、表面にはイオンの飛跡に沿って連続的に複数個のヒロックが形成されると報告された。これらは原子間力顕微鏡(AFM)を用いて観察されており、観察結果にはAFMのプローブ寸法由来の測定誤差を含んでいる。そこで本研究では、ヒロックのサイズより十分小さい分解能(1.5nm)を有し、非接触で観察可能な電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて連続ヒロックを観察し、形状の違いを検討した。SrTiOはNbを添加することで電気伝導性が発現する。SrTiO(100)とNbを0.05wt%添加した単結晶SrTiO(100)に対し、350MeVのAuビームを、単結晶表面に対するイオンの入射角が2度以下となるよう照射した。照射後のFE-SEM観察によって、SrTiO(100)表面には長さ数百nmにわたって直径20nmのヒロックが連続的に形成されていた一方で、Nbを添加したSrTiO(100)表面では、ほぼ同じ長さで凹状に溝が形成されていることがわかった。これらの形状の違いは電気伝導性とそれによる熱伝導性の違いが起因し、イオントラックの温度が融点付近になるSrTiO(100)ではヒロックが、昇華温度にまで上昇するNb添加SrTiO(100)では溝ができると考えられる。
株本 裕史; 長 明彦; 石崎 暢洋; 田山 豪一; 松田 誠; 仲野谷 孝充; 中村 暢彦; 沓掛 健一; 乙川 義憲; 遊津 拓洋
Proceedings of 14th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan (インターネット), p.1404 - 1408, 2017/12
原子力機構-東海タンデム加速器施設は最高運転電圧が約18MVの大型静電加速器で、核物理,核化学,原子物理,材料照射などの各分野に利用されている。当施設では2015年度中に起きた運転中の放電等により一部の加速管に不調が生じたため、しばらく加速電圧を低く抑えて運転を継続していたが、2016年度に加速管8本の交換作業を実施し、加速電圧は約17MVまで回復した。しかし、12月に起きた真空トラブルのため、再び加速管に不調が発生し、加速電圧を低く抑えての運転を余儀なくされた。現在、加速管を全て分解し、クリーニング等による電圧性能の回復を図っている。本発表では加速器の運転・整備状況およびビーム利用開発等について報告する。
小泉 光生; 坂佐井 馨; 呉田 昌俊; 中村 仁宣
日本原子力学会誌ATOMO, 58(11), p.642 - 646, 2016/11
核セキュリティ、保障措置分野では、核分裂に伴う中性子を検出する検認装置としてHe検出器を利用したものが広く利用されている。検出器に利用されるHeガスは、主に米国におけるストックから供給されてきたが、2001年9月11日の同時多発テロ以後、大量のHe中性子検知装置を米国内に配備したことから、在庫が減少し、供給が近い将来停止する状況になりつつあった。そうした中、2011年3月末のHe代替中性子検出技術に関するワークショップにおけるIAEAのHe代替非破壊分析装置開発の呼びかけに応じ、原子力機構においても、J-PARCセンターが開発したZnS/BOセラミックシンチレータをベースにHe代替検出器の開発を行い、平成27年3月には、開発した中性子検出装器の性能試験及びそれを実装した核物質検認用非破壊分析(Non-Destructive Assay (NDA))装置の性能実証試験を実施した。本解説では、開発した検出器、代替NDA装置を紹介し、あわせてHe問題の顛末を報告する。
立岩 尚之
高圧力の科学と技術, 25(4), p.274 - 282, 2016/01
われわれが開発を行ってきた高圧下磁化測定用圧力セルmCACについて解説行う。Quantum Design社のMPMSを始めて簡便に磁気測定が可能な、SQUID磁束計が開発され多くの研究機関/大学で使用されている。圧力セルをSQUID磁束計に適用させ高圧下磁化測定を行う試みも多く行われた。本解説記事ではわれわれの研究グループで開発が行われてきた高圧下磁化測定用圧力セル:セラミックアンビルセルmCACについてその詳細を紹介する。磁化の小さな材料から構成されるmCACでは、精度の良い測定ができ、10GPaを超える超高圧領域における磁気測定も可能である。圧力セルの詳細と希土類化合物YbCuSiの測定結果も紹介する。10GPaの圧力で強磁性状態が誘起されることを明らかにした。
石川 法人; 大久保 成彰; 田口 富嗣
Nanotechnology, 26(35), p.355701_1 - 355701_8, 2015/09
被引用回数:30 パーセンタイル:74.62(Nanoscience & Nanotechnology)UOの模擬物質として研究されることが多いCeOセラミックス材料に、200MeV Auイオンを斜入射方向から照射し、照射後試料を透過型電子顕微鏡(TEM)で微細観察した。その結果、イオン一つ一つが照射表面に形成するナノサイズの隆起物(ヒロック)が、試料表面に形成されるだけでなく、試料端のクラック面にも形成されることが分かった。試料端のヒロックは、TEMで直接観察することが可能なため、ヒロックの結晶性が本研究で初めて明らかになった。観察されたヒロックは、ほぼ均一で結晶性を有していること、さらには結晶方位が母相と同じことが分かった。さらに、ヒロックが球状形状をしていることが分かったので、表面に入射したイオンの入射点において材料の局所的な溶融を引き起こし、溶融した隆起物が表面張力によって球状に変化したプロセスが示唆された。
中村 仁宣; 向 泰宣; 飛田 浩; 中道 英男; 大図 章; 呉田 昌俊; 栗田 勉; 瀬谷 道夫
Proceedings of 37th ESARDA Annual Meeting (Internet), p.45 - 53, 2015/08
原子力機構ではHe-3の代替技術としてZnS/BOセラミックシンチレータを用いた中性子検出器の開発を進めてきた。この検出器はASAS(代替サンプル測定システム)といい、現在査察でMOX粉末等の測定に使用しているHe-3タイプのサンプル測定システム(INVS)を参考としたものである。He-3の代替技術としてPuの測定ができることを示すため、原子力機構ではASASを設計・製作し、実際のプルトニウム(MOX粉末)を用いた測定試験(デモンストレーション)を実施した。測定試験では、検出器の基本性能評価(FOM評価)のほか、測定のばらつきや不確かさ評価を行なうとともに、個々の性能についてINVSとの比較を実施した。その結果、代替He-3による中性子検出器(ASAS)の技術開発に関し、課題はあるものの、実際に使用している査察機器(INVS)と遜色のない定量性(測定不確かさ)を示すことができた。
小貫 薫; 野口 弘喜; 田中 伸幸; 竹上 弘彰; 久保 真治
表面科学, 36(2), p.80 - 85, 2015/02
水の熱化学分解による水素製造について、特にISプロセスに関する要素技術の研究開発状況を紹介する。熱化学水素製造法は熱エネルギーにより水を分解し水素を製造する。高温吸熱反応と低温発熱反応の反応サイクルが水分解に必要な自由エネルギーを生み出す。多くのプロセス構成が提案されてきたが、硫酸分解反応を高温吸熱反応に用いる硫黄系と呼ばれる一群の熱化学プロセスは常に研究者の関心を集めてきた。ISプロセスは硫黄系プロセスを代表する熱化学プロセスであり、これまでに、ISプロセスによる連続水分解の可能性が検証され、また、過酷なプロセス環境で用いる耐食性装置材料の候補材料も選定されている。現在、水素製造能力向上を目指して、分離膜技術の適用及び高性能触媒の開発研究が行われている。また、セラミックスのような候補材料を用いた反応器の開発が進められている。
瀬谷 道夫; 直井 洋介; 小林 直樹; 中村 孝久; 羽島 良一; 曽山 和彦; 呉田 昌俊; 中村 仁宣; 原田 秀郎
核物質管理学会(INMM)日本支部第35回年次大会論文集(インターネット), 9 Pages, 2015/01
日本原子力研究開発機構(JAEA)の核不拡散・核セキュリティ総合支援センターは、JAEAの他部門と協力して、核セキュリティ・核不拡散のための以下の先進核物質非破壊検知・測定基礎技術開発プログラムを実施してきている。(1)使用済燃料中プルトニウム非破壊測定(NDA)実証試験(PNAR法+SINRD法) (JAEA/USDOE(LANL)共同研究、平成25年度終了)、(2)レーザー・コンプトン散乱線非破壊測定技術開発(大強度単色線源基礎実証)、(3)ヘリウム3代替中性子検出技術開発、(4)中性子共鳴濃度分析法技術開発(JAEA/JRC共同研究)。この報告では、これらについてその概要を紹介する。
中村 龍也; 大図 章; 藤 健太郎; 坂佐井 馨; 鈴木 浩幸; 本田 克徳; 美留町 厚; 海老根 守澄; 山岸 秀志*; 高瀬 操; et al.
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A, 763, p.340 - 346, 2014/05
被引用回数:3 パーセンタイル:27.01(Instruments & Instrumentation)ヘリウム3ガス検出器の代替としてプルトニウム検認装置用に使用できるZnS/BOセラミックシンチレータ検出器を開発した。当該検出器はZnS/BOセラミックシンチレータを矩形状の光伝搬筐体内に対角配置しその両端に設置した光電子増倍管により中性子誘起の発光を収集するものでモジュラー構造を有する。有感面積30mm250mmをもつプロトタイプ検出器を試作し、中性子感度21.7-23.40.1cpsnv(熱中性子)、線感度1.1-1.90.210(Cs)、計数均一性6%、温度計数-0.240.05%/C(20-50C)の性能を確認した。
金正 倫計; 齊藤 芳男*; 壁谷 善三郎*; 荻原 徳男
Vacuum, 81(6), p.808 - 811, 2007/02
被引用回数:7 パーセンタイル:30.11(Materials Science, Multidisciplinary)大強度陽子加速器施設3GeVシンクロトロン(J-PARC-RCS)で使用されるアルミナセラミックス真空ダクトの開発に成功した。ダクトは大きく分けて2種類あり、一つは四極電磁石中で使用される直径約378mmの円断面を持つ長さ1.5mのダクトで、もう一つは、偏向電磁石中で使用されるレーストラック断面を持つ長さ約3.5mで15度湾曲したダクトである。これらは、長さ約0.8mのユニットダクトをメタライズとロウ付けにより接合することで実現した。また、ダクト外表面には、ダクト壁抵抗を小さくするために、PR銅電鋳という方法で、銅箔をストライプ上に接合した。さらに、ダクト内面には、壁からの二次電子放出を低減させるために、TiN膜をコーティングした。これらにより、J-PARC-RCSで使用するダクトが実現できた。
土谷 邦彦; 河村 弘; 田中 知*
Fusion Engineering and Design, 81(8-14), p.1065 - 1069, 2006/02
被引用回数:11 パーセンタイル:60.27(Nuclear Science & Technology)核融合炉ブランケットには、燃料であるトリチウムを造るためにリチウム含有セラミックスが微小球形状(直径0.32mm)として充填される。この微小球の各種特性(物理・化学的特性,熱的特性,機械的特性,照射特性等)を把握することは、ブランケットを設計するうえで必要不可欠である。このため、ヘルツの公式を用いて、YTZ(高強度ジルコニア)ボール及びLiTiO微小球の接触応力を求め、微小球の圧潰特性を評価した。直径の異なるYTZボールの最大接触圧力の評価を行った結果、球面と半無限平板の接触として取扱うことにより、セラミックス材料でも本公式で評価可能であることがわかった。次に、リチウム含有セラミックスである理論密度8085%TDの直径の異なるLiTiO微小球を評価した結果、接触応力は約6,0008,000N/mmの範囲であり、微小球直径にかかわらず、ほぼ一定であることがわかった。また、製造法の異なるカナダ製LiTiO微小球の最大接触圧力も同じであること,Li同位体比の違いによる最大接触圧力の違いもないこと等が明らかになった。
杉本 雅樹
工業材料, 53(12), p.75 - 79, 2005/12
本稿は耐熱・耐蝕性に優れた炭化ケイ素(SiC)のマイクロチューブをケイ素高分子から合成する新技術について述べている。具体的には、ケイ素高分子を繊維化し電子線照射で表面のみ酸化して架橋させ、未架橋の繊維内部を溶媒で抽出することで中空構造を形成し、その後不活性ガス中で熱処理してセラミックに転換する手法についての解説である。SiCマイクロチューブの長さは約20cm程度で、その壁厚を電子線照射条件によりその壁厚を220mの範囲で制御可能である。1000Cを超える耐熱性と耐蝕性を有し、また、アモルファス構造を利用したガス選択分離性を付与可能であることから、比表面積の大きなマイクロチューブを用いた高効率フィルターや吸着材等への応用が期待できる。
杉本 雅樹
放射線と産業, (105), p.29 - 34, 2005/03
SiCの前駆体高分子であるポリカルボシラン繊維を、電子線により表層のみ酸化架橋し、未架橋の内部を溶媒で抽出し、その後セラミック化することでSiCマイクロチューブを合成するプロセスを開発した。この電子線を用いた新規製造法と、電子線による表面酸化のメカニズム,SiCマイクロチューブの肉厚の制御法等について解説し、新規なSiC系材料について紹介する。
馬場 信一; 山地 雅俊*; 柴田 大受; 石原 正博; 沢 和弘
JAERI-Tech 2005-002, 83 Pages, 2005/02
高温工学に関する材料系科学技術分野において、将来の技術革新の契機となる各種新技術の創製に大きな貢献が期待される先端的基礎研究について、高温工学試験研究炉(HTTR)を用いて行うことが重要と考えられる。HTTR利用検討委員会において選定された8つの研究課題について、先端的基礎研究用セラミックス材料の予備照射試験が、平成6年度以来JMTRにおいて実施されてきた。本報告はこれまでに実施してきた照射試験の内容についての照射実績(照射量,温度)及び装荷試料について記述するとともに、照射挙動を明らかにするために使用した試験装置等の仕様・性能についても記述した。